1983年11月7日リリース(米国)
英国のプログレッシブ・ロック・バンド、Yesが1983年に発表した11作目のスタジオ・アルバム『90125』。1981年の活動休止を経て、新たなメンバー構成で再始動したYesが、それまでの壮大なプログレッシブ・ロック路線から、80年代らしいモダンで洗練されたロック・サウンドへと大きく舵を切った作品である。
最大の特徴は、南アフリカ出身のギタリスト、Trevor Rabinを迎えたこと。そして、プロデューサーにTrevor Hornを起用したことだ。Rabinの現代的なギター・サウンドと、Hornによる緻密で立体的なプロダクションが融合し、従来のYesとは異なる新しい音楽性を生み出した。
シングル「Owner of a Lonely Heart」は全米シングル・チャートで1位を獲得。アルバムも世界的なヒットとなり、Yesは従来のプログレッシブ・ロック・ファンに加え、幅広いリスナー層を獲得することになった。
価格:1,474円(税込、送料無料) (2026/11/6時点) |
新体制で切り開いた80年代のYes
本作の制作は、Chris SquireとAlan Whiteを中心に、Trevor Rabin、Tony Kayeが加わったプロジェクト「Cinema」から始まった。
当初は新バンドとしての活動を想定していたが、Jon Andersonが合流したことで、最終的にYesとしてアルバムを発表することになる。さらに、Tony Kayeにとっては1971年以来となるYesのスタジオ・アルバムへの復帰でもあった。
サウンド面では、従来の複雑な展開や長尺の組曲を中心とするスタイルから、コンパクトで明快な楽曲構成へと変化。シンセサイザーやエレクトロニクスを取り入れたリズム、重厚なコーラス、鋭いギター・サウンドが組み合わされている。
一方で、Yesらしい緻密な演奏やメンバー間のアンサンブルは健在だ。「Changes」や「Hearts」には、バンドが長年培ってきたプログレッシブな音楽性も感じられる。
Trevor Hornのプロデュースと「Owner of a Lonely Heart」
本作のサウンドを決定づけた重要人物が、プロデューサーのTrevor Hornである。
元The Bugglesのメンバーとしても知られるHornは、当時の最先端技術を取り入れた緻密な音作りによって、Yesの音楽に新たな方向性を与えた。特に「Owner of a Lonely Heart」では、印象的なギター・リフ、切れ味のあるリズム、サンプリングを用いた独特のサウンド処理が強いインパクトを生み出している。
この曲は全米シングル・チャートで1位を獲得し、Yesにとって最大級のヒットとなった。従来のプログレッシブ・ロックの枠を超え、ポップスやニューウェイヴのリスナーにも広く受け入れられた楽曲である。
また、「Leave It」の重層的なヴォーカル・ハーモニーや、「City of Love」の都会的で硬質なサウンドなど、アルバム全体を通じてHornのプロダクションが大きな役割を果たしている。
バンドの新たな時代を切り開いた重要な作品『Owner of a Lonely Heart』
アルバムのオープニングを飾る代表曲。Trevor Rabinが持ち込んだ印象的なギター・リフを軸に、力強いビートとJon Andersonのヴォーカルが展開していく。
ギターやドラムのサウンドには大胆なエフェクト処理が施され、従来のYesにはなかった鋭さとポップな躍動感を生み出している。楽曲の随所に盛り込まれたサウンド・コラージュも特徴的で、Trevor Hornのプロデュース・ワークが際立つ一曲だ。
全米シングル・チャート1位を記録したこの曲は、1980年代のYesを象徴するナンバーであり、バンドの新たな時代を切り開いた重要な作品となった。
収録曲
Side A
- Owner of a Lonely Heart
- Hold On
- It Can Happen
- Changes
Side B
5. Cinema
6. Leave It
7. Our Song
8. City of Love
9. Hearts
パーソネル
- Jon Anderson:Vocals
- Trevor Rabin:Guitars, Keyboards, Vocals
- Chris Squire:Bass, Vocals
- Tony Kaye:Keyboards
- Alan White:Drums, Percussion, Vocals
プロダクション
- Producer:Trevor Horn、Yes
- Engineer:Gary Langan
- Additional Engineers:Stuart Bruce、Julian Mendelsohn
- Keyboard Programming:J.J. Jeczalik、Dave Lawson
Yesの新たな時代を象徴する転換点
『90125』は、Yesがそれまでのプログレッシブ・ロックのイメージを大きく変え、80年代の音楽シーンに適応した新たなサウンドを確立した作品である。
Trevor Rabinの加入による音楽性の変化、Jon Andersonの復帰、そしてTrevor Hornの先鋭的なプロダクション。それぞれの要素が結びついたことで、バンドは新たな成功を手にした。
従来のYesを愛するファンの間では賛否を呼んだ作品でもあるが、「Owner of a Lonely Heart」をはじめとする楽曲の完成度と時代性は、今なお色あせていない。Yesの長いキャリアにおいて、音楽的な転換点となった重要作である。



コメント