1993年11月3日リリース(日本盤)
ブラジルから登場したメロディック・パワーメタルの新星
1993年、ブラジル出身のAngra(アングラ)が発表したデビュー・アルバム『Angels Cry』。クラシック音楽の要素を取り入れた壮大な楽曲構成と、スピード感あふれる演奏、そしてアンドレ・マトスの卓越したハイトーン・ボーカルによって、世界のメタル・シーンに強烈な印象を残した作品だ。
当時のブラジルのヘヴィメタル・シーンから登場したAngraは、ヨーロッパのメロディック・スピードメタルやパワーメタルの影響を受けながら、クラシック音楽やプログレッシヴな要素を独自の形で融合。ツイン・ギターを中心としたテクニカルな演奏と、ドラマティックなメロディーを武器に、新しい可能性を切り開いた。
本作は、その後のAngraの音楽的な方向性を決定づけた記念すべきデビュー作であり、ブラジルのメタルを世界へと広める重要な一歩となった。
アンドレ・マトスの歌唱力とクラシカルな音楽性
本作の大きな魅力の一つが、ボーカルを担当するアンドレ・マトスの存在だ。
オペラやクラシック音楽からの影響を感じさせる伸びやかなハイトーンと、繊細な表現力を兼ね備えた歌唱は、Angraのサウンドに独特の華やかさを与えている。単に高音を響かせるだけではなく、楽曲の展開に合わせて力強さと叙情性を使い分ける表現力も聴きどころだ。
また、アンドレはボーカルだけでなくキーボードやピアノも担当。クラシック音楽への造詣を生かしたアレンジが、アルバム全体のドラマティックな世界観を形作っている。
ギターを担当するラファエル・ビッテンコートとキコ・ルーレイロによるツイン・ギターも大きな聴きどころ。テクニカルな速弾きや美しいハーモニーを織り交ぜながら、メロディーを重視した演奏を展開している。
ドイツでのレコーディングと豪華なゲスト陣
レコーディングは1993年7月から9月にかけて、ドイツのKai Hansen StudiosやHorus Sound Studioなどで行われた。
プロデュースとエンジニアリングには、Charlie Bauerfeind(チャーリー・バウアーファイント)とSascha Paeth(サシャ・ピート)が参加。後にヨーロッパのメタル・シーンで数多くの作品を手がけることになるサシャ・ピートの存在も、本作のサウンドを語るうえで重要だ。
さらに、HelloweenのKai Hansen(カイ・ハンセン)が「Never Understand」でリード・ギターを担当。ドイツのメロディック・パワーメタルを代表する人物が参加したことも、当時のメタル・ファンにとって注目すべきポイントだった。
クラシック音楽の要素を取り入れたアレンジと、ヨーロッパのメタル・シーンとのつながり。こうした要素が重なり、ブラジル発のバンドでありながら国際的な広がりを感じさせる作品に仕上がっている。
「Carry On」から「Wuthering Heights」まで、多彩な楽曲
アルバムの代表曲としてまず挙げたいのが「Carry On」だ。疾走感のあるリズムと印象的なギター・リフ、アンドレ・マトスのハイトーン・ボーカルが一体となった、Angraを象徴する楽曲である。
「Time」は、メロディーの美しさとドラマティックな展開が印象的なナンバー。バンドの叙情的な側面を感じさせる一曲だ。
また、タイトル曲「Angels Cry」では、スピードだけに頼らない緻密な構成と、壮大なメロディーが展開される。「Evil Warning」ではテクニカルな演奏と力強いボーカルが際立ち、バンドの演奏力を存分に味わえる。
さらに注目したいのが、Kate Bush(ケイト・ブッシュ)の楽曲「Wuthering Heights」のカバーだ。原曲の持つ独特の旋律とドラマティックな雰囲気を、Angraならではのメタル・アレンジで再構築している。
90年代メロディック・パワーメタルを代表するデビュー作
『Angels Cry』は、ブラジルのバンドがヨーロッパを中心とするメタル・シーンに存在感を示した作品としても重要だ。
クラシック音楽の影響を受けた壮大な構成、スピード感のある演奏、ツイン・ギターの美しいハーモニー、そしてアンドレ・マトスの圧倒的な歌唱力。これらの要素は、後のAngraの作品にも受け継がれていく。
本作の成功を経て、バンドは1996年に次作『Holy Land』を発表。ブラジルの民族音楽なども取り入れながら、さらに独自の音楽性を発展させていくことになる。
『Angels Cry』は、Angraの出発点であると同時に、90年代のメロディック・パワーメタルを語るうえで欠かせない一枚だ。
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収録曲
- Unfinished Allegro
- Carry On
- Time
- Angels Cry
- Stand Away
- Never Understand
- Wuthering Heights
- Streets of Tomorrow
- Evil Warning
- Lasting Child: I. The Parting Words / II. Renaissance
※日本盤のオリジナル収録曲10曲。
参加ミュージシャン・制作クレジット
Angra
- Andre Matos(アンドレ・マトス):ボーカル、キーボード、ピアノ
- Rafael Bittencourt(ラファエル・ビッテンコート):ギター
- Kiko Loureiro(キコ・ルーレイロ):ギター
- Luís Mariutti(ルイス・マリウッティ):ベース
ドラム・ゲスト参加
- Alex Holzwarth(アレックス・ホルツヴァルト):ドラム(主に「Unfinished Allegro」「Carry On」「Time」「Angels Cry」「Stand Away」「Never Understand」「Streets of Tomorrow」「Evil Warning」「Lasting Child」)
- Thomas Nack(トーマス・ナック):ドラム(「Wuthering Heights」)
- Kai Hansen(カイ・ハンセン):ゲスト・リード・ギター(「Never Understand」)
- Sascha Paeth(サシャ・ピート):アコースティック・ギター、キーボード・プログラミング
- Tuto Ferraz(トゥト・フェハス):パーカッション(「Stand Away」)
制作
- プロデュース:Charlie Bauerfeind、Sascha Paeth
- レコーディング:Kai Hansen Studios、Horus Sound Studioほか(ドイツ)
- ミキシング:Charlie Bauerfeind
- レーベル:Victor(日本盤)
※アルバムの録音参加者を記載。後年のライブ編成やメンバー写真とは異なる場合がある。
代表曲 Carry On
Angraの名を世界に知らしめた代表曲であり、本作を象徴するメロディック・パワーメタルの名曲だ。
疾走感あふれるリズムに、ラファエル・ビッテンコートとキコ・ルーレイロのツイン・ギターが絡み合い、アンドレ・マトスの伸びやかなハイトーン・ボーカルが楽曲を一気に盛り上げる。
テクニカルなギター・プレイやスピード感だけでなく、耳に残るメロディーとドラマティックな展開を兼ね備えている点が、この曲の大きな魅力だ。
クラシック音楽の影響を感じさせる壮大なアレンジと、ヘヴィメタルならではの攻撃性が見事に融合。Angraが持つ音楽性を凝縮した一曲であり、90年代メロディック・パワーメタルを代表する楽曲の一つとして、今なお高い人気を誇っている。
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