1971年11月5日リリース(英国)
4作目のスタジオ・アルバム
『Madman Across the Water』は、エルトン・ジョンが1971年に発表した4作目のスタジオ・アルバムである。
前作『Tumbleweed Connection』(1970年)に続き、作詞家バーニー・トーピンとのコンビによって制作された本作は、エルトンのピアノを中心としたメロディアスなロックに、壮大なオーケストレーションを取り入れた作品となっている。
アルバムには「Tiny Dancer」「Levon」「Madman Across the Water」「Indian Sunset」など、現在も高い人気を誇る楽曲を収録。アメリカでの生活や風景から着想を得た歌詞、歴史や社会を題材にした物語性の強い楽曲が並び、バーニー・トーピンの作詞家としての個性も際立っている。
プロデュースは、エルトンの初期作品を数多く手掛けたガス・ダッジョン。オーケストラ・アレンジはポール・バックマスターが担当した。ストリングスや管弦楽器を効果的に取り入れたサウンドは、単なるピアノ・ロックにとどまらないスケール感を生み出している。
英国のアルバム・チャートでは最高41位だった一方、米国では最高8位を記録。アメリカでの評価が高く、エルトン・ジョンが世界的な人気を確立していく時期を象徴する作品のひとつとなった。
エルトンのピアノとボーカルを中心に、ロック・バンドの演奏とオーケストラを融合させたサウンド
本作の大きな特徴は、エルトンのピアノとボーカルを中心に、ロック・バンドの演奏とオーケストラを融合させたサウンドにある。
「Tiny Dancer」では、アコースティック・ギターやペダル・スティール・ギター、ピアノを中心に、徐々に演奏が広がっていく。後半に向けて厚みを増すコーラスとストリングスが、楽曲に大きな高揚感をもたらしている。
一方、「Levon」では、ピアノとリズム・セクションを軸にした力強い演奏に、オーケストラが加わることで独特のドラマ性を生み出している。
「Indian Sunset」や「Madman Across the Water」では、長い演奏時間を生かした展開と壮大なアレンジが聴きどころだ。特にポール・バックマスターによるストリングスは、単なる装飾ではなく、楽曲の物語を音楽的に表現する重要な役割を担っている。
曲ごとに参加するミュージシャンが異なるセッション形式で録音されていることも、本作の特徴だ。複数のドラマーやベーシスト、ギタリスト、キーボーディストが参加し、それぞれの楽曲に適した演奏を組み立てている。
本作の冒頭を飾る楽曲『Tiny Dancer』
「Tiny Dancer」は、エルトン・ジョンとバーニー・トーピンのコンビが生み出した代表曲のひとつであり、本作の冒頭を飾る楽曲である。
エルトンのピアノを中心に、アコースティック・ギターやペダル・スティール・ギターが加わり、穏やかで伸びやかなサウンドを作り上げている。楽曲が進むにつれてコーラスやストリングスが重なり、後半には壮大な盛り上がりを見せる。
歌詞は、バーニー・トーピンがアメリカで目にした人々や風景から着想を得たもの。ロサンゼルスの若い女性の姿を思わせる描写が散りばめられ、具体的な物語を断定するのではなく、印象的な情景を連ねることで独特の世界を作り出している。
録音には、エルトンのピアノとボーカルに加え、ロジャー・ポープのドラム、デヴィッド・グローヴァーのベース、ケイレブ・クエイのエレクトリック・ギター、B.J.コールのペダル・スティール・ギター、デイヴィー・ジョンストンのアコースティック・ギターが参加。さらに複数のバック・ボーカルとオーケストラが加わっている。
発表当初から広く知られていた曲だが、2000年公開の映画『あの頃ペニー・レインと』で使用されたことなどをきっかけに、さらに多くのリスナーに親しまれるようになった。
参加ミュージシャン
本作は曲ごとに参加メンバーが異なるセッション形式で制作されている。主な参加ミュージシャンは以下のとおり。
- Vocals, Piano: Elton John
- Guitar: Davey Johnstone、Caleb Quaye、Chris Spedding
- Bass: Dee Murray、Herbie Flowers、David Glover、Brian Odgers
- Drums: Nigel Olsson、Roger Pope、Terry Cox、Barry Morgan
- Keyboards: Rick Wakeman、Diana Lewis、Brian Dee
- Percussion: Ray Cooper
- Pedal Steel Guitar: B.J. Cole
- Orchestral Arrangements: Paul Buckmaster
エルトンのピアノとボーカルを中心に、当時の英国ロック・シーンで活躍していた実力派ミュージシャンが多数参加している。
特に、後にエルトンの長年のギタリストとなるデイヴィー・ジョンストンは、本作の録音セッションに初めて参加した。アコースティック・ギターだけでなく、マンドリンやシタールも演奏し、楽曲に独特の彩りを加えている。
また、イエスへの加入前のリック・ウェイクマンもオルガンで参加。ポール・バックマスターによるオーケストラ・アレンジとともに、作品の多彩な音楽性を支えている。
制作クレジット
- Producer: Gus Dudgeon
- Engineer: Robin Geoffrey Cable
- Re-mix Engineer: Ken Scott
- Orchestral Arrangements: Paul Buckmaster
- Recording Studio: Trident Studios(ロンドン)
プロデュースはガス・ダッジョンが担当。録音はロンドンのトライデント・スタジオで、1971年2月と8月を中心に行われた。
ポール・バックマスターによるオーケストラ・アレンジは、本作のサウンドを特徴づける重要な要素だ。エルトンのピアノを中心とした楽曲に、ストリングスや管弦楽器を組み合わせることで、作品全体に映画音楽を思わせるような広がりを与えている。
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収録曲
Side One
- Tiny Dancer
- Levon
- Razor Face
- Madman Across the Water
Side Two
- Indian Sunset
- Holiday Inn
- Rotten Peaches
- All the Nasties
- Goodbye
全9曲を収録。作曲はエルトン・ジョン、作詞はバーニー・トーピンが担当している。
アルバム全体に豊かな表情
『Madman Across the Water』は、エルトン・ジョンのピアノ・ロックを基盤に、壮大なオーケストレーションと物語性豊かな楽曲を融合させた重要作である。
「Tiny Dancer」や「Levon」のような親しみやすいメロディを持つ楽曲から、「Indian Sunset」やタイトル曲のような長尺でドラマチックな作品まで、アルバム全体に豊かな表情がある。
バーニー・トーピンの歌詞は、アメリカの風景や人々、歴史的な題材を独自の視点で描き、エルトンのメロディと結び付くことで、聴き手の想像力を刺激する音楽世界を作り上げている。
1970年代前半のエルトン・ジョンが持っていた創作力と、ガス・ダッジョン、ポール・バックマスターら制作陣の手腕が結実した一枚。後の世界的な成功へとつながる時期を代表するアルバムとして、今も高く評価されている。



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