1990年11月6日リリース
ドイツを代表するハードロック・バンド、Scorpionsが1990年に発表した11作目のスタジオ・アルバム『Crazy World』。世界的な大ヒット曲「Wind of Change」を収録し、バンドのキャリアにおいても重要な位置を占める作品である。
1980年代後半の『Love at First Sting』『Savage Amusement』で世界的な成功を収めたScorpionsは、本作で新たな制作体制に臨んだ。長年にわたってバンドの作品を手がけてきたDieter Dierksに代わり、アメリカのプロデューサーKeith Olsenを起用。バンド自身も共同プロデューサーとして参加している。
アルバムには「Tease Me Please Me」「Don’t Believe Her」といった力強いハードロック・ナンバーから、時代を象徴するバラード「Wind of Change」、そして「Send Me an Angel」まで、多彩な楽曲が収録されている。
新たな制作体制で生まれたハードロック・サウンド
本作の大きな特徴は、長年のパートナーだったDieter DierksからKeith Olsenへとプロデューサーが交代したことだ。
Keith Olsenは、Fleetwood Macをはじめ数多くのアーティストの作品に携わってきたプロデューサー。本作ではScorpionsの持つ力強いギター・サウンドを生かしながら、より厚みのある音作りを実現している。
Rudolf SchenkerとMatthias Jabsによるツイン・ギターは、鋭いリフとメロディアスなフレーズを使い分け、Klaus Meineの伸びやかなボーカルを支える。Herman RarebellのドラムとFrancis Buchholzのベースも、楽曲に安定した推進力を与えている。
「Tease Me Please Me」「Don’t Believe Her」「Hit Between the Eyes」などでは、1980年代に確立したScorpionsらしいハードロックの魅力が存分に発揮されている。一方で、メロディを重視した楽曲も多く、幅広いリスナーに届く作品に仕上がった。
冷戦終結期を象徴した「Wind of Change」
本作を代表する楽曲が「Wind of Change」だ。
Klaus Meineが作詞・作曲したこの曲は、冷戦終結へと向かう時代の変化を背景に生まれた。1989年、Scorpionsはモスクワで開催された音楽イベント「Moscow Music Peace Festival」に出演。ソ連での経験や、東西の緊張が変化していく時代の空気が、楽曲の着想につながったとされる。
アコースティック・ギターを中心とした穏やかなイントロから始まり、Klaus Meineの歌声が希望を感じさせるメロディを紡いでいく。印象的な口笛のフレーズも、この曲を象徴する要素となった。
「Wind of Change」はアルバムを代表するだけでなく、Scorpionsのキャリアを語るうえで欠かせない世界的なヒット曲となった。政治や国境を越えて、多くの人々に時代の変化と平和への願いを伝えた楽曲である。
もうひとつの名曲「Send Me an Angel」
アルバム終盤に収録された「Send Me an Angel」も、Scorpionsを代表するバラードのひとつだ。
「Wind of Change」と同様に、メロディの美しさとKlaus Meineの歌唱が際立つ楽曲であり、壮大さを持ちながらも親しみやすい仕上がりになっている。
また、「To Be with You in Heaven」や「Restless Nights」など、アルバムにはハードロックの力強さとメロディアスな魅力を兼ね備えた楽曲が並ぶ。バンドの持ち味を保ちながら、1990年代へ向かう新しい時代に対応した作品といえる。
収録曲
- Tease Me Please Me
- Don’t Believe Her
- To Be with You in Heaven
- Wind of Change
- Restless Nights
- Lust or Love
- Kicks After Six
- Hit Between the Eyes
- Money and Fame
- Crazy World
- Send Me an Angel
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参加メンバー
- Klaus Meine:Vocals
- Rudolf Schenker:Guitar
- Matthias Jabs:Guitar
- Francis Buchholz:Bass
- Herman Rarebell:Drums
制作クレジット
- Producer:Keith Olsen、Scorpions
- Engineer:Keith Olsen、Erwin Musper
- Additional Mixing:Erwin Musper、Shay Baby
- Keyboards:Koen van Baal、Jim Vallance
- Recording Studios:Goodnight LA Studios(ロサンゼルス)、Wisseloord Studios(オランダ)
本作は、ベーシストFrancis Buchholzが参加した最後のScorpionsのスタジオ・アルバムとなった。その後、バンドは新たなメンバー編成へと移行していく。
『Crazy World』は、長年築き上げてきたハードロックのスタイルを受け継ぎながら、時代を象徴する楽曲を生み出した作品である。「Wind of Change」の世界的な成功によってScorpionsの名をさらに広め、1990年代のバンドの歩みを方向づけた重要な一枚といえる。



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