2014年11月7日リリース(一部地域・配信)
英国を代表するプログレッシブ・ロック・バンド、Pink Floydが2014年に発表した15作目のスタジオ・アルバム『The Endless River』。1994年の『The Division Bell』以来、実に20年ぶりとなる新作であり、2008年に亡くなったキーボーディスト、Richard Wrightへの追悼の意味を込めて制作された作品である。
本作の出発点となったのは、1993年に『The Division Bell』を制作した際に録音されていた未発表音源だ。David Gilmour、Nick Mason、Richard Wrightの3人によるセッションから20時間以上の素材を掘り起こし、そこに新たな演奏やアレンジを加えて再構成。アルバムの大部分はインストゥルメンタルで構成され、最後の「Louder Than Words」のみ歌詞を伴うヴォーカル曲となっている。
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Richard Wrightへの追悼から生まれた作品
『The Endless River』の中心にあるのは、Pink Floydのサウンドを長年支えてきたRichard Wrightの演奏だ。
Wrightは『The Dark Side of the Moon』『Wish You Were Here』『Animals』など、バンドの代表作で重要な役割を担ってきたキーボーディスト。繊細なピアノやオルガン、シンセサイザーによる音色は、David GilmourのギターとともにPink Floyd独自の幻想的な世界を形作っていた。
本作では、1993年のセッションで録音されたWrightのキーボード演奏を軸に、GilmourとMasonが音源を選び直し、新たなパートを加えてアルバムとして完成させた。単なる未発表音源集ではなく、過去の演奏を素材にしながら、2014年のPink Floydとして新たな作品に仕上げている点が特徴だ。
4つのテーマで構成された音の旅
アルバムはアナログ盤の4面に相当する4つのパートで構成されている。楽曲同士が連続して展開するように配置され、個々の曲を聴くというよりも、作品全体をひとつの流れとして味わう構成だ。
「Things Left Unsaid」や「It’s What We Do」では、静かなシンセサイザーの響きとギターの旋律が重なり、Pink Floydらしい浮遊感のあるサウンドが広がる。「Anisina」ではピアノやサックスを交えた叙情的な演奏が印象的だ。
一方、「Allons-y (1)」「Allons-y (2)」では、過去の楽曲「Run Like Hell」を思わせる躍動的なリズムが登場する。「Talkin’ Hawkin’」では、物理学者Stephen Hawkingの音声を取り入れた演出も聴きどころとなっている。
全体を通じて、派手な展開や強いビートよりも、音の重なりや空間の広がりを重視した作風。Pink Floydが長年追求してきたアンビエントな音楽性を、改めて味わえる内容となっている。
壮大なサウンドが展開『Louder Than Words』
アルバムの最後を飾る、唯一の本格的なヴォーカル曲。David Gilmourのギターと歌声を中心に、穏やかでありながら壮大なサウンドが展開する。
歌詞は、David Gilmourの妻であり、長年にわたりバンドの作品にも関わってきたPolly Samsonが担当。バンドのメンバー同士が言葉を交わさなくても音楽を通じて意思を伝え合ってきた関係性や、Pink Floydというバンドの歴史を思わせる内容となっている。
Richard Wrightの演奏を含む過去のセッション音源から始まった本作を、Gilmourの歌声とギターで締めくくる構成は象徴的だ。長い時間をかけて築かれたバンドの絆と、Wrightへの思いが込められた一曲である。
収録曲
Side A
- Things Left Unsaid
- It’s What We Do
- Ebb and Flow
Side B
4. Sum
5. Skins
6. Unsung
7. Anisina
Side C
8. The Lost Art of Conversation
9. On Noodle Street
10. Night Light
11. Allons-y (1)
12. Autumn ’68
13. Allons-y (2)
14. Talkin’ Hawkin’
Side D
15. Calling
16. Eyes to Pearls
17. Surfacing
18. Louder Than Words
パーソネル
- David Gilmour:Guitars, Vocals, Keyboards
- Nick Mason:Drums, Percussion
- Richard Wright:Keyboards, Piano, Organ, Synthesizers
プロダクション
- Producers:David Gilmour、Phil Manzanera、Youth、Andy Jackson
- Original Session Production:David Gilmour、Bob Ezrin
- Recording Engineer:Andy Jackson
- Additional Engineering:Damon Iddins
Pink Floydの歴史を静かに締めくくる一枚
『The Endless River』は、過去の未発表音源を再構成することで、Richard Wrightの演奏とPink Floydの音楽的な歴史を改めて浮かび上がらせた作品である。
従来のアルバムのようなヴォーカル曲や明確な物語性を期待すると、やや趣の異なる内容に感じられるかもしれない。しかし、ギター、キーボード、ドラムが織りなす音の風景に身を委ねることで、Pink Floydが長年培ってきた独特の音楽世界を堪能できる。
『The Division Bell』の時代から続く演奏の記録であり、Richard Wrightへの敬意を込めた作品。そして、Pink Floydのスタジオ・アルバムとしては現時点で最後の作品となっている。



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