1994年11月1日リリース(米国)/1994年11月2日リリース(日本)
作品概要
『MTV Unplugged in New York』は、ニルヴァーナがMTVの人気音楽番組「MTV Unplugged」のために行ったアコースティック・ライブを収録したアルバムである。
収録されたのは、1993年11月18日にニューヨークのSony Music Studiosで行われたステージ。カート・コバーン、クリス・ノヴォセリック、デイヴ・グロールに加え、ツアー・ギタリストのパット・スメア、チェロ奏者のローリー・ゴールドストンが参加。さらに、ミート・パペッツのカート・カークウッドとクリス・カークウッドをゲストに迎えている。
1994年4月にカート・コバーンが亡くなった後、同年11月にリリースされた本作は、ニルヴァーナにとって彼の死後初めて発表されたアルバムとなった。
全14曲のうち、ニルヴァーナ自身の楽曲だけでなく、デヴィッド・ボウイ、ヴァセリンズ、ミート・パペッツ、リード・ベリーなどの楽曲を取り上げている点も大きな特徴だ。ヒット曲を並べるのではなく、バンドが敬愛するアーティストの作品や、アルバム収録曲を中心に構成された選曲は、彼らの音楽的ルーツや幅広い嗜好を感じさせる。
アコースティック編成が引き出したニルヴァーナのもう一つの魅力
本作では、ニルヴァーナの代名詞ともいえる激しいディストーション・ギターや轟音のサウンドを抑え、アコースティック・ギター、ベース、ドラム、チェロを中心とした落ち着いた編成で演奏している。
しかし、単に楽曲を静かにアレンジした作品ではない。カート・コバーンの声が持つ繊細さ、かすれた響き、そして感情の揺れが、シンプルな演奏によってより鮮明に浮かび上がっている。
「About a Girl」や「Come as You Are」といった既発曲も、原曲とは異なる表情を見せる。一方で、デヴィッド・ボウイの「The Man Who Sold the World」や、ミート・パペッツの楽曲を取り上げることで、ニルヴァーナが単なるグランジ・バンドではないことも伝えている。
特に、チェロを加えたアレンジは作品全体に独特の陰影を与えており、静かな演奏の中にも緊張感が漂う。バンドの持つメロディーの強さと、カートの歌声の存在感を存分に味わえる内容だ。
収録に至る背景と歴史的意義
MTVの「Unplugged」への出演は、ニルヴァーナが世界的な成功を収めた後の1993年に実現した。
当時のニルヴァーナは、1991年の『Nevermind』によってグランジ・ムーブメントの中心的存在となり、1993年には『In Utero』を発表。大規模なライブ活動を続ける一方で、カート・コバーンは自身の音楽的ルーツや、より幅広い表現への関心を示していた。
このステージで特徴的なのは、代表的なヒット曲を中心にした構成を選ばなかったことだ。ヴァセリンズの「Jesus Doesn’t Want Me for a Sunbeam」、ミート・パペッツの「Plateau」「Oh Me」「Lake of Fire」など、カートが影響を受けたアーティストの楽曲を積極的に取り上げている。
ミート・パペッツの3曲では、同バンドのカート・カークウッドとクリス・カークウッドがゲスト参加。オリジナル・アーティストとともに演奏するという特別なステージとなった。
そして、ライブの最後を飾る「Where Did You Sleep Last Night」では、カートの圧倒的な歌唱が披露される。曲が進むにつれて高まる緊張感と、最後の一節に込められた凄みは、本作を象徴する名場面として語り継がれている。
カート・コバーンの死後に発表されたこともあり、本作はしばしば彼の人生と結び付けて語られる。しかし、作品そのものに耳を傾ければ、そこにあるのは悲劇的な物語だけではない。ニルヴァーナというバンドの音楽的な豊かさと、カート・コバーンの表現者としての魅力を記録した、優れたライブ作品である。
収録曲
- About a Girl
- Come as You Are
- Jesus Doesn’t Want Me for a Sunbeam(The Vaselinesのカバー)
- The Man Who Sold the World(David Bowieのカバー)
- Pennyroyal Tea
- Dumb
- Polly
- On a Plain
- Something in the Way
- Plateau(Meat Puppetsのカバー)
- Oh Me(Meat Puppetsのカバー)
- Lake of Fire(Meat Puppetsのカバー)
- All Apologies
- Where Did You Sleep Last Night(Lead Bellyで知られるトラディショナル・ソング)
参加ミュージシャン
Nirvana
- Kurt Cobain(カート・コバーン) – Vocals, Acoustic Guitar
- Krist Novoselic(クリス・ノヴォセリック) – Bass, Accordion, Guitar
- Dave Grohl(デイヴ・グロール) – Drums, Vocals, Bass
- Pat Smear(パット・スメア) – Guitar
Additional Musicians
- Lori Goldston(ローリー・ゴールドストン) – Cello
- Curt Kirkwood(カート・カークウッド/Meat Puppets) – Guitar(「Plateau」「Oh Me」「Lake of Fire」)
- Cris Kirkwood(クリス・カークウッド/Meat Puppets) – Bass, Backing Vocals(「Plateau」「Oh Me」「Lake of Fire」)
作品情報
- アーティスト:Nirvana
- アルバム:MTV Unplugged in New York
- リリース:1994年11月1日(米国)
- 日本盤リリース:1994年11月2日
- レーベル:DGC Records
- プロデューサー:Nirvana, Scott Litt
- MTV番組プロデューサー:Alex Coletti
- 録音日:1993年11月18日
- 録音場所:Sony Music Studios, New York
- 収録曲数:14曲
- 収録時間:約54分
本作は全米Billboard 200で初登場1位を記録。1996年のグラミー賞では、Best Alternative Music Performanceを受賞した。
代表曲 Where Did You Sleep Last Night
アルバムの最後を飾る「Where Did You Sleep Last Night」は、本作を象徴する一曲である。
アメリカの伝承歌として知られ、ブルース・ミュージシャンのLead Belly(リード・ベリー)の演奏でも広く知られる楽曲。ニルヴァーナは、この古いフォーク・ソングを独自の解釈で演奏している。
静かに始まる演奏は、カート・コバーンの歌声によって徐々に緊張感を増していく。終盤に向かって感情が高まり、最後のフレーズで見せる圧倒的な歌唱は、聴く者に強烈な印象を残す。
激しいギター・サウンドに頼らず、声と演奏だけで聴き手を引き込む表現力は、カート・コバーンというミュージシャンの非凡さを改めて感じさせる。
本作を初めて聴く人にも、ニルヴァーナのファンにも、ぜひ最後まで聴いてほしい名演である。



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