1992年11月3日リリース(米国)
90年代の新たな時代へ踏み出した5作目のスタジオ・アルバム
1992年、Bon Jovi(ボン・ジョヴィ)が発表した5作目のスタジオ・アルバム『Keep the Faith』。1988年の大ヒット作『New Jersey』以来、約4年ぶりとなるオリジナル・アルバムであり、バンドが80年代の華やかなハードロックから、より成熟した90年代のロックへと歩みを進めた重要作だ。
『New Jersey』に伴う長期ツアーを終えたメンバーは、それぞれの活動や休息を経て、バンドの今後について改めて向き合うことになる。その間に音楽シーンではグランジやオルタナティヴ・ロックが台頭し、80年代のヘアメタルやアリーナ・ロックを取り巻く環境も大きく変化していた。
そうした時代の変化を受け止めながら、Bon Joviは自分たちのルーツを見失うことなく、新しいサウンドを追求。本作には、従来のキャッチーなメロディーや壮大なスケール感を残しつつ、より骨太で落ち着いたロック・サウンドが収められている。
ボブ・ロックが引き出したバンドの新しい表情
本作のプロデュースを担当したのは、Metallicaの『Metallica』(通称ブラック・アルバム)などでも知られるBob Rock(ボブ・ロック)。
録音はカナダ・バンクーバーのLittle Mountain Sound Studiosで行われた。重厚なギター・サウンドと、各楽器の存在感を生かしたプロダクションによって、バンドの演奏がより力強く響く作品に仕上がっている。
Richie Samboraのギターは、従来の華やかなフレーズだけでなく、楽曲の骨格を支えるリフや表情豊かなソロでも存在感を発揮。Jon Bon Joviのボーカルも、若々しい勢いに加えて、人生経験を重ねたような深みを感じさせる。
アルバム全体には、ハードロックの力強さと、ブルースやアメリカン・ロックに通じる土臭さが共存している。80年代の成功を単純に再現するのではなく、バンドの音楽性を一段階成熟させた作品といえる。
表題曲「Keep the Faith」に込められた決意
アルバムの中心となるのが、タイトル曲「Keep the Faith」だ。
力強いドラムと印象的なベース・ラインから始まり、Richie Samboraのギターが楽曲を彩る。Jon Bon Joviのボーカルは、困難な状況の中でも信念を失わずに進もうとするメッセージを力強く歌い上げる。
80年代の華やかな成功を経て、音楽シーンの変化に直面していたバンド自身の状況とも重なる内容であり、新たな時代に向けたBon Joviの決意表明のようにも受け取れる。
シングルとしてもヒットし、アルバムを象徴する楽曲として現在まで高い人気を保っている。
バラードから大作まで、多彩な楽曲構成
本作には、Bon Joviらしいメロディアスなロック・ナンバーに加え、壮大なバラードやブルージーな楽曲も収録されている。
「Bed of Roses」は、ピアノを基調とした美しいメロディーと、Jonの情感豊かな歌唱が印象的なバラード。シングルとしても成功し、バンドの代表的なバラードの一つとなった。
「In These Arms」は、David BryanのキーボードとRichie Samboraのギターが効果的に絡む、スケールの大きなロック・ナンバー。コーラスの高揚感も含め、Bon Joviらしい魅力が詰まっている。
一方、約10分に及ぶ「Dry County」は、本作の中でも特に聴き応えのある大作だ。アメリカの乾いた土地を舞台に、貧困や希望、夢と現実といったテーマを描き、ブルースを感じさせる展開とドラマティックなギター・ソロが楽曲を盛り上げる。
こうした幅広い楽曲構成が、本作を単なるヒット曲集ではなく、アルバムとして聴き込める作品にしている。
90年代のBon Joviを代表する重要作
『Keep the Faith』は、米国Billboard 200で最高5位を記録。英国やオーストラリアなどでも高い人気を獲得し、世界的な成功を収めた。
80年代のハードロック・ブームが変化していく中で、Bon Joviは自らのスタイルを見直し、90年代にも通用するバンドとしての方向性を示した。
本作は、80年代のBon Joviと、その後の成熟したBon Joviをつなぐ転換点といえるアルバムだ。キャッチーなメロディー、骨太なロック・サウンド、そしてメッセージ性のある楽曲。そのバランスは、彼らが長く第一線で活動を続けることになる強さの一端を示している。
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収録曲
- I Believe
- Keep the Faith
- I’ll Sleep When I’m Dead
- In These Arms
- Bed of Roses
- If I Was Your Mother
- Dry County
- Woman in Love
- Fear
- I Want You
- Blame It on the Love of Rock & Roll
- Little Bit of Soul
※オリジナル米国盤CDの全12曲。
参加ミュージシャン・制作クレジット
Bon Jovi
- Jon Bon Jovi(ジョン・ボン・ジョヴィ):ボーカル
- Richie Sambora(リッチー・サンボラ):ギター、バック・ボーカル
- David Bryan(デヴィッド・ブライアン):キーボード、バック・ボーカル
- Alec John Such(アレック・ジョン・サッチ):ベース、バック・ボーカル
- Tico Torres(ティコ・トーレス):ドラム
主な制作スタッフ
- プロデュース:Bob Rock(ボブ・ロック)
- エンジニア:Randy Staub(ランディ・スタウブ)
- ミキシング:Bob Rock、Randy Staub
- レコーディング:Little Mountain Sound Studios(カナダ・バンクーバー)
- ミキシング:A&M Studios(米国・ロサンゼルス)
- レーベル:Mercury Records
※上記は本作の基本的な参加メンバーと制作クレジット。楽曲ごとの追加参加者は含めていない。
代表曲 Keep the Faith
アルバムのタイトルを冠した「Keep the Faith」は、1990年代のBon Joviを象徴する楽曲の一つだ。
冒頭から印象的なベースとドラムが楽曲を引っ張り、そこにギターとキーボードが重なることで、力強くも開放感のあるサウンドが生まれている。Jon Bon Joviのボーカルは、サビに向かって熱量を高め、聴き手を大きな高揚感へと導く。
歌詞に込められているのは、困難な時代にあっても希望や信念を失わずに進んでいこうというメッセージ。バンド自身が大きな転換期を迎えていた時代背景を考えると、この曲がアルバムのタイトルに選ばれた意味も伝わってくる。
80年代の華やかなBon Joviとは一味違う、成熟したロック・バンドとしての力強さを感じさせる名曲である。



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