1988年リリース(発売日には資料による違いあり)
LAメタルの人気バンドが新たな方向性を模索した4作目
1988年、アメリカのハードロック・バンドRATT(ラット)が発表した4作目のスタジオ・アルバム『Reach for the Sky』。
前作『Dancing Undercover』から約2年ぶりとなる本作は、80年代LAメタル・シーンを代表するバンドの一つであるRATTが、それまでの華やかなハードロック路線から新たな音楽性へと踏み出した作品だ。
Stephen Pearcyの特徴的なボーカル、Warren DeMartiniとRobbin Crosbyによるツイン・ギター、Juan Croucierのベース、Bobby Blotzerのドラムという編成は健在。バンドならではのキャッチーなメロディーとハードな演奏を残しながら、ブルースやファンキーな要素を取り入れたサウンドへと変化している。
当時のLAメタル・シーンでは、派手なルックスやキャッチーな楽曲を武器にしたバンドが数多く活躍していた。そうした状況の中で、RATTは自分たちの音楽性を広げようと試みたのである。
ブルージーなギターと新しいサウンドへの挑戦
本作で特に印象的なのが、従来のRATTのイメージとは少し異なるブルージーなアプローチだ。
その代表例が「Way Cool Jr.」。ブルースを感じさせるギター・リフと、ゆったりとしたグルーヴが特徴的な楽曲で、Warren DeMartiniのギター・プレイも従来の疾走感のあるハードロックとは異なる表情を見せている。
さらに、この曲にはホーン・アレンジも取り入れられており、アルバム全体の中でも異彩を放つ存在となっている。
一方、「I Want a Woman」や「City to City」では、RATTらしいキャッチーなメロディーと力強いギター・サウンドが楽しめる。従来のファンにも馴染みやすい楽曲と、新しい方向性を示す楽曲が共存している点が本作の特徴だ。
「Way Cool Jr.」が示したRATTの新たな魅力
アルバムからのシングルとして注目を集めたのが「Way Cool Jr.」だ。
それまでのRATTの代表曲に見られたスピード感や派手なギター・リフとは異なり、ブルースを基調とした落ち着いたグルーヴが楽曲の中心にある。
Warren DeMartiniのギターは、テクニカルな速弾きだけでなく、ブルージーなフレーズや表情豊かなソロでも存在感を発揮。Stephen Pearcyのボーカルも、楽曲の持つ独特の雰囲気によく合っている。
この曲は、RATTが単なるLAメタルの人気バンドにとどまらず、幅広い音楽的な表現力を持っていることを示したナンバーといえる。
Beau HillとMike Stoneによるプロダクション
本作のプロデュースを担当したのは、Beau Hill(ボー・ヒル)とMike Stone(マイク・ストーン)。
Beau Hillは、RATTの初期作品をはじめ、80年代のハードロック・シーンで数多くの作品を手がけてきたプロデューサーだ。本作でも、バンドの持つメロディーの魅力と演奏の個性を生かしたサウンド作りに関わっている。
レコーディングにはStephen BenbenやAlan Wrightらがエンジニアとして参加。ホーン・アレンジにはChris BottiとKent Smithが携わり、The New West Hornsによる演奏も加えられている。
ギターを中心としたハードロックの骨格を保ちながら、ホーンなどの要素を取り入れたアレンジは、本作の音楽的な変化を象徴している。
全米アルバム・チャート17位を記録
『Reach for the Sky』は、米国Billboard 200で最高17位を記録。日本のオリコン・アルバム・チャートでも最高6位となり、バンドの国際的な人気を示した。
一方で、従来のRATTのサウンドを期待していたファンにとっては、方向性の変化が賛否を呼ぶ作品でもあった。
しかし、そうした挑戦があったからこそ、本作はRATTのディスコグラフィーの中でも個性的な位置を占めている。80年代LAメタルの華やかさと、ブルースを基調とした骨太なロックの両方を味わえるアルバムだ。
価格:9,655円(税込、送料別) (2026/11/2時点) |
収録曲
- City to City
- I Want a Woman
- Way Cool Jr.
- Don’t Bite the Hand That Feeds
- I Want to Love You Tonight
- Chain Reaction
- No Surprise
- Bottom Line
- What’s It Gonna Be
- What I’m After
※オリジナル・アルバムの全10曲。
参加ミュージシャン・制作クレジット
RATT
- Stephen Pearcy(スティーヴン・パーシー):ボーカル
- Warren DeMartini(ウォーレン・デ・マルティーニ):ギター、バック・ボーカル
- Robbin Crosby(ロビン・クロスビー):ギター、バック・ボーカル
- Juan Croucier(フォアン・クルーシェ):ベース、バック・ボーカル
- Bobby Blotzer(ボビー・ブロッツァー):ドラム、パーカッション、ハーモニカ、ウォッシュボード
ゲスト・ミュージシャン
- The New West Horns:ホーン
- Chris Botti(クリス・ボッティ):ホーン・アレンジ
- Kent Smith(ケント・スミス):ホーン・アレンジ
制作
- プロデュース:Beau Hill(ボー・ヒル)、Mike Stone(マイク・ストーン)
- レコーディング・エンジニア:Stephen Benben、Alan Wright
- ミキシング:Stephen Benben、Beau Hill
- レーベル:Atlantic Records
代表曲 Way Cool Jr.
『Reach for the Sky』を代表する楽曲であり、RATTの音楽的な幅広さを感じさせるナンバー。
ブルースを基調としたギター・リフと、ゆったりとしたグルーヴが楽曲全体を支えている。Warren DeMartiniのギターは、速弾きだけに頼らない表情豊かなプレイを聴かせ、Stephen Pearcyのボーカルも独特の色気を感じさせる。
ホーンを取り入れたアレンジも印象的で、従来のLAメタルの華やかなサウンドとは一味違う魅力を生み出している。
RATTが持つハードロックの力強さを残しながら、ブルースやファンクの要素を取り入れた意欲的な一曲。バンドの新たな可能性を示した、本作を語るうえで欠かせない代表曲である。



コメント