1969年11月4日リリース(米国)
アルバム概要
『The Allman Brothers Band』は、アメリカのロック・バンド、オールマン・ブラザーズ・バンドが1969年に発表したデビュー・アルバムである。
1969年3月にフロリダ州ジャクソンビルで結成された彼らは、その後ジョージア州メイコンを拠点に活動を展開。デュアン・オールマンとグレッグ・オールマンの兄弟を中心に、ディッキー・ベッツ、ベリー・オークリー、ブッチ・トラックス、ジェイモー・ジョハンソンという6人編成で、独自の音楽スタイルを築き上げていった。
本作の大きな特徴は、ブルースを土台にしたツイン・ギターとツイン・ドラムの編成にある。デュアン・オールマンのスライド・ギターとディッキー・ベッツのギターが互いに呼応し、ブッチ・トラックスとジェイモーによる2人のドラマーがリズムに厚みと躍動感を与える。
収録曲には、ブルースの伝統を受け継ぐ「Trouble No More」、グレッグ・オールマンのソングライティングが光る「It’s Not My Cross to Bear」や「Dreams」、そして後にバンドを代表する楽曲となる「Whipping Post」などを収録。
当時のアメリカ南部の音楽文化に根差しながら、ブルース、ロック、ジャズ、ゴスペルの要素を融合させたサウンドは、後にサザン・ロックと呼ばれる音楽の重要な礎となった。
サウンドの特徴
本作を聴いてまず印象に残るのは、2本のギターが生み出す立体的なアンサンブルだ。
デュアン・オールマンは、ブルースを基盤とした表現力豊かなリード・プレイに加え、スライド・ギターによって独特の響きを生み出している。一方、ディッキー・ベッツは、メロディアスなフレーズや流麗なギター・ワークで楽曲に別の表情を加える。2人は単に同じフレーズを重ねるのではなく、それぞれの個性を生かしながら、時には掛け合い、時には絡み合うように演奏している。
リズム面では、ブッチ・トラックスとジェイモーのツイン・ドラムが重要な役割を担う。単純に音数を増やすのではなく、異なるリズムのアクセントやパーカッションを組み合わせることで、独特のグルーヴを作り出している。
さらに、グレッグ・オールマンのハモンド・オルガンがブルース色の濃いサウンドを支え、しゃがれた味わい深いボーカルが楽曲に強い存在感を与えている。
こうした演奏スタイルは、ブルースを単に再現するのではなく、バンド全体の即興性やアンサンブルによって発展させたものだ。後のライブ作品『At Fillmore East』で大きく花開く演奏の原点が、本作にはすでに表れている。
独特の緊張感を生み出している『Whipping Post』
アルバムの最後を飾る「Whipping Post」は、オールマン・ブラザーズ・バンドを代表する楽曲のひとつであり、グレッグ・オールマンのソングライティングとバンドの演奏力が結び付いた重要なナンバーである。
冒頭から印象的なベース・リフが登場し、そこにギターとオルガン、2人のドラマーによる重厚なアンサンブルが加わっていく。ブルースを基盤としながらも、一般的な12小節ブルースとは異なる展開を持ち、独特の緊張感を生み出している。
特に印象的なのが、5拍子を基調としたリズムだ。通常のロックで多く用いられる4拍子とは異なる拍の感覚が、楽曲に不安定さと独特のうねりを与えている。それでいて演奏は決して難解にならず、ブルースの持つ力強さと感情表現を失っていない。
グレッグのボーカルは、苦悩や葛藤を感じさせる力強い歌い方で楽曲の世界観を伝える。デュアンとディッキーのギターがそれに応えるように展開し、バンド全体が一体となってドラマを作り上げていく。
後年のライブでは演奏時間を大きく拡張し、長尺の即興演奏を含む代表的なレパートリーへと発展した。本作のスタジオ・バージョンには、その後のライブでの展開につながる原型が収められている。
参加ミュージシャン
- Vocals, Organ, Piano: Gregg Allman
- Lead Guitar, Slide Guitar, Acoustic Guitar: Duane Allman
- Lead Guitar: Dickey Betts
- Bass: Berry Oakley
- Drums, Percussion: Butch Trucks
- Drums, Congas: Jai Johanny Johanson(Jaimoe)
デュアン・オールマンとグレッグ・オールマンの兄弟を中心に、ギターのディッキー・ベッツ、ベースのベリー・オークリー、ドラムのブッチ・トラックスとジェイモーが参加。後にバンドの黄金期を築くことになる初期の6人編成が、このデビュー作で確立されている。
制作クレジット
- Producer: Adrian Barber
- Recording Engineer: Adrian Barber
- Recording Studio: Atlantic Studios(ニューヨーク)
プロデュースと録音エンジニアリングはエイドリアン・バーバーが担当。録音はニューヨークのアトランティック・スタジオで行われた。
バーバーはアトランティック・レコードに関わるエンジニアとして活動していた人物で、本作ではバンドの演奏を生かしたサウンド作りを担っている。
収録曲
Side One
- Don’t Want You No More
- It’s Not My Cross to Bear
- Black Hearted Woman
- Trouble No More
Side Two
- Every Hungry Woman
- Dreams
- Whipping Post
全7曲のうち、「Don’t Want You No More」はスペンサー・デイヴィスとフィル・ソーヤーによる楽曲で、オリジナルはスペンサー・デイヴィス・グループの作品。「Trouble No More」はブルース・ミュージシャン、マディ・ウォーターズの楽曲を取り上げている。その他のオリジナル曲では、グレッグ・オールマンの作曲家としての才能が発揮されている。
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サザン・ロックの方向性を示した重要なデビュー・アルバム
『The Allman Brothers Band』は、オールマン・ブラザーズ・バンドの音楽的な出発点であると同時に、後のサザン・ロックの方向性を示した重要なデビュー・アルバムだ。
ブルースを基盤としながら、ツイン・ギターとツイン・ドラムによる独自のアンサンブルを確立。グレッグ・オールマンの歌とオルガン、デュアン・オールマンとディッキー・ベッツの個性的なギター・プレイが一体となり、他のバンドにはないサウンドを生み出している。
この時点ですでに「Dreams」や「Whipping Post」のような、後のライブ活動でも重要な役割を果たす楽曲が生まれていたことは興味深い。
その後、1971年のライブ・アルバム『At Fillmore East』によって世界的な評価を確立する彼らだが、その原点を知るうえで本作は欠かせない一枚である。アメリカ南部のブルースとロックが結び付いた瞬間を感じさせる、歴史的なデビュー作といえる。



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