MTV『Unplugged』初回収録 1989年10月31日

ロック史この日

1989年10月31日、米国の音楽専門チャンネルMTVが、新たな音楽ライブ番組『Unplugged(アンプラグド)』の初回収録をニューヨークで行った。出演したのは、英国のロックバンドSqueeze(スクイーズ)、シンガーソングライターのSyd Straw(シド・ストロー)、そしてThe CarsのギタリストElliot Easton(エリオット・イーストン)ら。アコースティック演奏を中心としたこの番組は、その後、数々の伝説的なパフォーマンスを生み出し、ロックの歴史に残る音楽番組へと成長していくことになる。

なお、初回収録が行われたのは10月31日だが、番組の初放送は同年11月26日。ハロウィーンの日に収録されたことも、この番組のスタートを語るエピソードのひとつとなっている。

『Unplugged』が生まれた背景

『Unplugged』は、普段はエレクトリック楽器を中心に演奏するアーティストが、アコースティック楽器を使って自分たちの楽曲を披露するというコンセプトで企画された。

番組のアイデアには、シンガーソングライターのJules Shear(ジュールズ・シアー)や、MTVのプロデューサーRobert Small、Jim Burnsらが関わっている。大規模なステージ演出や派手なミュージックビデオとは異なり、演奏そのものやアーティストの歌声、楽曲の魅力をより近い距離で伝えることを目指していた。

初回収録では、SqueezeのChris Difford(クリス・ディフォード)とGlenn Tilbrook(グレン・ティルブルック)がエレクトリック・ギターを持って会場に現れ、スタッフが急きょアコースティック・ギターを用意するというエピソードも残されている。

番組のタイトルが示すコンセプトを、出演者自身もまだ十分に理解していなかったという、スタート当初の微笑ましい出来事だった。

数々の名演を生んだ伝説の音楽番組

『Unplugged』は放送開始後、さまざまなジャンルのアーティストを迎え、アコースティック・ライブの可能性を広げていった。

Eric Clapton(エリック・クラプトン)、Nirvana(ニルヴァーナ)、Pearl Jam(パール・ジャム)、Aerosmith(エアロスミス)、KISS(キッス)、Stevie Ray Vaughan(スティーヴィー・レイ・ヴォーン)など、ロック史に名を刻むアーティストたちが出演。普段のライブとは異なるアレンジや演奏を披露し、楽曲の新たな魅力を引き出してきた。

なかでも1992年に収録されたEric Claptonのパフォーマンスは大きな反響を呼び、「Layla」などの楽曲をアコースティック・アレンジで披露。番組の人気を世界的なものへと押し上げた。

さらに1993年にはNirvanaが出演し、代表曲だけでなくカバー曲も織り交ぜた印象的なステージを展開。Kurt Cobain(カート・コバーン)の歌声とバンドの演奏が一体となったこの公演は、現在もロック史に残る名演として語り継がれている。

『Unplugged』は単なるアコースティック・ライブ番組にとどまらず、アーティストの音楽的な本質や表現力を再発見させる場となった。エレクトリックなサウンドが主流だったロックシーンにおいて、演奏の原点に立ち返るという価値を提示したことも、この番組の大きな功績といえる。

代表曲 Pulling Mussels (From The Shell)

初回収録に出演したSqueezeの代表曲のひとつが、1980年に発表された「Pulling Mussels (From The Shell)」だ。

Chris DiffordとGlenn Tilbrookによるソングライティングが光る楽曲で、軽快なギターと親しみやすいメロディ、物語性のある歌詞が特徴。英国らしいポップセンスとロックの魅力が凝縮されたナンバーである。

初回の『Unplugged』でも披露されたこの曲は、番組が目指したアコースティック・パフォーマンスの魅力を伝える一曲となった。

Squeeze – Pulling Mussels (From The Shell)

1989年10月31日に行われた小さなスタジオでの収録は、その後の音楽番組のあり方にも影響を与える大きな一歩となった。数多くの名演を生み出し、アーティストの新たな魅力を伝え続けた『Unplugged』。その歴史は、ロックファンにとって今も色あせない音楽の記憶として残っている。

コメント

タイトルとURLをコピーしました