Aerosmith『Night in the Ruts』(ナイト・イン・ザ・ラッツ)

アルバム

1979年11月16日リリース(米国)

アルバムの概要

『Night in the Ruts』は、アメリカのハードロックバンドAerosmithが1979年に発表した6枚目のスタジオ・アルバムである。

前作『Draw the Line』(1977年)、ライブアルバム『Live! Bootleg』(1978年)に続く作品で、1970年代のAerosmithを締めくくる重要なアルバムのひとつとなっている。

本作が制作された1979年当時、バンドはメンバー間の対立や薬物問題などによって深刻な状況に陥っていた。特に、ボーカリストのSteven TylerとギタリストのJoe Perryの関係は悪化し、レコーディングの途中でJoe Perryがバンドを脱退するという事態に発展した。

そのため、アルバムにはJoe Perryが参加した楽曲と、後任ギタリスト候補となったJimmy Crespoらが演奏に加わった楽曲が混在している。

こうした不安定な制作環境の中で完成した本作だが、Aerosmithらしいブルースを基調としたロックンロール、荒々しいギターサウンド、Steven Tylerの個性的なボーカルは健在だ。

全米Billboard 200では最高14位を記録し、1994年にはアメリカレコード協会(RIAA)からプラチナ認定を受けている。

バンドが大きな転換期を迎える直前の姿を捉えた作品であり、1970年代のAerosmithの歴史を語るうえで欠かせない一枚である。

音楽性とサウンドの特徴

『Night in the Ruts』では、初期Aerosmithの特徴であるブルースロックを基盤とした、泥臭く荒々しいハードロックが展開されている。

前作『Draw the Line』にも通じるワイルドなギターサウンドに加え、ファンキーなリズムやホーンセクションを取り入れた楽曲など、バンドの幅広い音楽性を感じさせる内容となっている。

オープニングの「No Surprize」は、歯切れのよいギターリフとSteven Tylerの存在感あるボーカルが印象的なロックナンバー。続く「Chiquita」では、ホーンセクションを取り入れた躍動感のあるサウンドが楽しめる。

また、「Three Mile Smile」では、Joe Perryのギターを中心としたジャムセッション的な演奏が展開され、バンド本来のブルースロックの魅力が発揮されている。

一方、「Remember (Walking in the Sand)」では、The Shangri-Lasの1964年のヒット曲を大胆にカバー。原曲の哀愁を残しながら、Steven Tylerの個性的な歌唱によってAerosmith独自の楽曲へと仕上げている。

さらに、アルバム終盤の「Mia」は、Steven Tylerが娘のために書いた美しいバラードで、荒々しいロックナンバーとは異なる叙情的な側面を見せている。

全体として、統一感のある完成度という点では評価が分かれる作品だが、1970年代のAerosmithが持っていたブルースロックの魅力を随所に感じられるアルバムである。

制作背景とJoe Perryの脱退

本作の制作時期は、Aerosmithにとってキャリア最大級の危機のひとつだった。

1970年代半ばに『Toys in the Attic』(1975年)や『Rocks』(1976年)を発表し、アメリカを代表するハードロックバンドへと成長したAerosmithだったが、過密なツアーやレコーディング、メンバーの薬物問題などによって、バンド内の関係は次第に悪化していった。

『Night in the Ruts』の制作は、当初、過去4作品を手掛けてきたJack Douglasを中心に進められていた。しかし、制作の遅れやメンバー間の対立が深刻化し、最終的にはGary Lyonsがプロデューサーとして制作を引き継ぐことになった。

さらに、1979年のレコーディング途中でJoe Perryがバンドを離脱。残されたギターパートの一部は、Brad WhitfordやRichie Supa、Neil Thompsonらが補い、Jimmy Crespoもギターソロの録音に参加した。

Jimmy Crespoは、その後Joe Perryの後任としてAerosmithに加入し、1984年まで在籍することになる。

こうした混乱の中で完成した本作は、結果的にオリジナルメンバーによる1970年代最後のスタジオ・アルバムとなった。

Joe Perryの脱退後、Aerosmithは1980年代前半にさらなるメンバーの離脱を経験し、1982年には『Rock in a Hard Place』を発表。バンドは大きな低迷期へと向かっていく。

その意味で『Night in the Ruts』は、黄金期のAerosmithが崩壊へ向かう過程を記録した作品であり、同時にバンドの再生へと続く歴史の重要な節目でもある。

収録曲

Side One

  1. No Surprize
  2. Chiquita
  3. Remember (Walking in the Sand)
  4. Cheese Cake

Side Two

  1. Three Mile Smile
  2. Reefer Head Woman
  3. Bone to Bone (Coney Island White Fish Boy)
  4. Think About It
  5. Mia

全9曲を収録。

なお、カバー曲は以下の3曲。

  • Remember (Walking in the Sand) – The Shangri-Lasの楽曲
  • Reefer Head Woman – 1930年代に録音されたブルース楽曲をルーツとするナンバー
  • Think About It – The Yardbirdsの楽曲

参加メンバー

Aerosmith

  • Steven Tyler(スティーヴン・タイラー)- Lead Vocals, Harmonica, Keyboards, Percussion
  • Joe Perry(ジョー・ペリー)- Lead Guitar
  • Brad Whitford(ブラッド・ウィットフォード)- Guitar
  • Tom Hamilton(トム・ハミルトン)- Bass
  • Joey Kramer(ジョーイ・クレイマー)- Drums

その他のギター参加者

  • Richie Supa(リッチー・スパ)- Guitar
  • Neil Thompson(ニール・トンプソン)- Guitar
  • Jimmy Crespo(ジミー・クレスポ)- Guitar Solo(「Three Mile Smile」)

※Joe Perryはレコーディング途中で脱退しており、全曲に参加しているわけではない。Jimmy Crespoは後任ギタリストとして正式加入する前に、本作の一部の録音に参加している。

ホーンセクション(「Chiquita」)

  • George Young(ジョージ・ヤング)- Alto Saxophone
  • Lou Delgotto(ルー・デルガット)- Baritone Saxophone
  • Lou Marini(ルー・マリーニ)- Tenor Saxophone
  • Barry Rogers(バリー・ロジャース)- Trombone

作品情報

  • アーティスト:Aerosmith(エアロスミス)
  • アルバム名:Night in the Ruts(ナイト・イン・ザ・ラッツ)
  • 発売日:1979年11月16日
  • 発売国:アメリカ
  • レーベル:Columbia Records
  • 作品形態:スタジオ・アルバム
  • アルバム通算:6作目
  • 収録曲数:9曲
  • 録音スタジオ:MediaSound Studios、The Record Plant(ニューヨーク)
  • プロデューサー:Aerosmith、Gary Lyons

チャート・セールス

  • 全米Billboard 200:最高14位
  • アメリカ:RIAAプラチナ認定(1994年)

代表曲 No Surprize

アルバムのオープニングを飾る「No Surprize」は、本作を代表するロックナンバーである。

この曲の大きな特徴は、Aerosmith自身の歴史を題材にした自伝的な歌詞にある。

1971年の活動初期から、ニューヨークの有名クラブMax’s Kansas Cityでの経験、レコード会社との契約、そして成功を手にするまでの道のりが描かれている。

歌詞には、バンドの成功の裏側にあった音楽業界への不満や皮肉も盛り込まれており、単なるロックンロールではなく、当時のAerosmithが置かれていた状況を反映した作品となっている。

Steven Tylerの個性的なボーカルと、Joe Perryらしいブルースを基調としたギターサウンドが一体となり、初期Aerosmithの荒々しい魅力を存分に味わえる。

バンドが混乱の時期を迎えていたことを考えると、自分たちの歩みを振り返るこの曲は、アルバム全体の背景を象徴する存在ともいえる。

1970年代のAerosmithを知るうえでも、ぜひ聴いておきたい一曲だ。

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