2009年11月3日リリース(米国)
スラッシュメタルの王者が放った2000年代後期の重要作
2009年、Slayer(スレイヤー)が発表したスタジオ・アルバム『World Painted Blood』。前作『Christ Illusion』から約3年ぶりとなる作品で、バンドの持ち味である猛烈なスピード、攻撃的なギター・リフ、そして不穏な世界観を改めて前面に押し出した一枚だ。
1980年代からスラッシュメタル・シーンを牽引してきたSlayerは、2000年代に入ってもその攻撃性を失うことなく活動を続けていた。本作では、トム・アラヤのボーカルとベース、ケリー・キングとジェフ・ハンネマンのツイン・ギター、デイヴ・ロンバードのドラムという強力な編成が再び結集している。
戦争、暴力、破壊、狂気といった題材を扱う歌詞と、容赦のない演奏。タイトルが示す「血に染まった世界」というイメージそのままに、アルバム全体を緊張感と殺気が支配している。
グレッグ・フィデルマンとリック・ルービンによる制作
本作のプロデュースを担当したのは、MetallicaやSlipknotなどの作品にも携わってきたGreg Fidelman(グレッグ・フィデルマン)。エグゼクティブ・プロデューサーには、長年Slayerと関わってきたRick Rubin(リック・ルービン)が名を連ねている。
録音はロサンゼルスのThe Passで行われた。2008年10月に最初のセッションを実施し、その後2009年初頭にもレコーディングを進めるという形で制作された。
サウンドは、ギターの鋭さとドラムの迫力を前面に押し出したもの。複雑な展開を見せる楽曲でも、演奏の勢いを損なわず、Slayerらしい緊張感を保っている。
また、バンドのメンバーが作曲過程でより密接に関わり、互いのアイデアを持ち寄って制作したことも当時のインタビューで語られている。4人の個性がぶつかり合うだけでなく、バンドとしての一体感も感じられる作品だ。
戦争、暴力、狂気を描く11曲
アルバムの冒頭を飾るタイトル曲「World Painted Blood」は、不穏なギター・リフと疾走感のあるリズムが印象的なナンバー。作品全体の世界観を提示するような、強烈なオープニングだ。
「Unit 731」は、第二次世界大戦中の旧日本軍の部隊を題材にした楽曲。歴史上の残虐行為を取り上げた、ジェフ・ハンネマンらしい題材選びが際立っている。
「Hate Worldwide」は、ケリー・キングによる攻撃的なリフとスピード感が前面に出た楽曲。シングルとしても発表され、アルバムを代表するナンバーの一つとなった。
一方、「Beauty Through Order」や「Playing With Dolls」では、不穏な空気を漂わせながら、楽曲の展開に変化を持たせている。単純なスピード一辺倒ではなく、Slayerならではの緊張感を生かした構成も聴きどころだ。
オリジナル・メンバー4人がそろった最後のスタジオ・アルバム
『World Painted Blood』は、Slayerのオリジナル・メンバー4人がそろって参加した最後のスタジオ・アルバムでもある。
その後、ジェフ・ハンネマンは2013年に亡くなり、同年にはデイヴ・ロンバードもバンドを離れることとなった。結果として、本作はこの4人による最後のスタジオ録音作品となった。
もちろん、制作当時にそのような結末が予想されていたわけではない。しかし、Slayerの長い歴史を振り返ると、4人が再びそろって作り上げた本作には特別な意味がある。
アルバムのジャケットは複数のデザインを組み合わせると、頭蓋骨や骨で描かれた世界地図が完成するという趣向。音楽だけでなくパッケージにも、作品タイトルのイメージを反映させていた。
スラッシュメタルの攻撃性を貫いた作品
『World Painted Blood』は、米国で2009年11月3日に発売され、Slayerの持ち味である過激なサウンドを改めて示した作品となった。
時代とともにヘヴィメタルのスタイルが多様化する中でも、Slayerは流行に迎合することなく、自分たちの音楽を追求し続けた。本作にも、複雑なギター・リフ、鋭いリズム、そして聴き手を圧倒する演奏が詰め込まれている。
80年代の名盤群と比較しても、Slayerらしい攻撃性が失われていないことを確認できる一枚であり、2000年代のスラッシュメタルを振り返るうえでも重要な作品だ。
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収録曲
- World Painted Blood
- Unit 731
- Snuff
- Beauty Through Order
- Hate Worldwide
- Public Display of Dismemberment
- Human Strain
- Americon
- Psychopathy Red
- Playing With Dolls
- Not of This God
※オリジナル・アルバムの全11曲。
参加ミュージシャン・制作クレジット
Slayer
- Tom Araya(トム・アラヤ):ボーカル、ベース
- Kerry King(ケリー・キング):ギター
- Jeff Hanneman(ジェフ・ハンネマン):ギター
- Dave Lombardo(デイヴ・ロンバード):ドラム
制作
- プロデュース:Greg Fidelman(グレッグ・フィデルマン)
- エグゼクティブ・プロデュース:Rick Rubin(リック・ルービン)
- レコーディング、エンジニアリング、ミキシング:Greg Fidelman
- マスタリング:Vlado Meller(ブラド・メラー)
- レーベル:American Recordings / Columbia Records
- レコーディング:The Pass(米国・ロサンゼルス)
代表曲 World Painted Blood
アルバムのタイトル曲「World Painted Blood」は、本作の世界観とSlayerの音楽性を凝縮した一曲だ。
不穏な雰囲気を持つギター・リフから始まり、ケリー・キングとジェフ・ハンネマンのギターが生み出す鋭いサウンドが、楽曲全体に緊張感を与えている。トム・アラヤのボーカルも、荒々しさと迫力を兼ね備え、破滅的なイメージを強く印象づける。
戦争や暴力、破壊に覆われた世界を描く歌詞は、アルバム全体を貫くテーマとも結びついている。スピードと攻撃性だけでなく、Slayer特有の不穏な空気を味わえる楽曲だ。
オリジナル・メンバー4人がそろった最後のスタジオ・アルバムを象徴するタイトル曲として、バンドの歴史を振り返るうえでも印象深いナンバーである。



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