1987年11月2日リリース(発売日には資料による違いあり)
80年代アメリカン・ヘヴィメタルの頂点を飾った名盤
アメリカのヘヴィメタル・バンド、Dokken(ドッケン)が1987年に発表した4作目のスタジオ・アルバム『Back for the Attack』。Don Dokken(ドン・ドッケン)の伸びやかでメロディアスなボーカルと、George Lynch(ジョージ・リンチ)の鋭くテクニカルなギターが激しくせめぎ合う、80年代メタルを代表する作品のひとつだ。
当時のDokkenは、アルバム『Tooth and Nail』『Under Lock and Key』によって、アメリカのハードロック/ヘヴィメタル・シーンで存在感を高めていた。本作は、その勢いをさらに押し進めたアルバムである。
本作のサウンドは、キャッチーなメロディーを備えながらも、従来作以上にハードで攻撃的だ。重厚なリフ、緻密なリズム、テクニカルなギター・ソロを組み合わせ、メロディアスなハードロックと本格的なヘヴィメタルの両面を追求している。
特にGeorge Lynchのギター・プレイは本作の大きな聴きどころだ。流麗な速弾きだけでなく、独特の音色やフレージング、印象的なリフによって楽曲に強烈な個性を与えている。一方、Don Dokkenのボーカルは、激しい演奏の中でもメロディーを際立たせ、バンドの音楽を単なる技巧偏重のメタルに終わらせていない。
George Lynchのギターが切り開くハードなサウンド
アルバム冒頭の「Kiss of Death」は、本作の方向性を鮮明に示す楽曲だ。
重厚なギター・リフと緊迫感のある展開から始まり、Don DokkenのボーカルとGeorge Lynchのギターが互いの存在感を際立たせていく。メロディーの美しさと演奏の激しさを両立させた構成は、Dokkenの持ち味を象徴している。
「Prisoner」や「Night by Night」では、歯切れのよいリフと力強いリズムが楽曲を牽引。スピード感を保ちながらも、歌のメロディーやギター・フレーズが明確に記憶に残る。
「Heaven Sent」では、メロディアスなボーカルとギターの華やかな表現が融合し、80年代のハードロックらしい魅力を存分に発揮。一方、「Lost Behind the Wall」や「Stop Fighting Love」では、より攻撃的なギター・サウンドと力強いリズムが印象に残る。
本作を聴くと、Dokkenが単にギター・ヒーローを前面に押し出したバンドではなかったことも分かる。George Lynchの個性的なプレイを軸にしながら、Don Dokkenの歌、Jeff Pilson(ジェフ・ピルソン)のベース、Mick Brown(ミック・ブラウン)のドラムが一体となることで、バンドとしての強靱なサウンドを生み出している。
インストゥルメンタルの傑作「Mr. Scary」
『Back for the Attack』を語るうえで欠かせないのが、6曲目に収録されたインストゥルメンタル「Mr. Scary」だ。
ボーカルを排し、George Lynchのギターを中心に展開するこの曲は、彼の技術と個性を存分に味わえる作品として、ギター・ファンから高い評価を受けている。
単に速弾きを披露するだけではなく、独特の音色、緊張感のあるリフ、表情豊かなフレーズを組み合わせ、曲全体に不穏でスリリングな雰囲気を生み出している。ギターの音色そのものを楽曲表現の一部として活用している点も聴きどころだ。
Jeff Pilsonも作曲に参加しており、ギターの技巧を見せるためだけの曲ではなく、構成とリフを備えたインストゥルメンタルとして成立している。
80年代のヘヴィメタルには数多くのギター・インストゥルメンタルが存在するが、「Mr. Scary」はGeorge Lynchの個性が明確に表れた代表的な一曲といえる。
映画『エルム街の悪夢3』と「Dream Warriors」
アルバムの最後を飾る「Dream Warriors」も、本作を代表する重要曲だ。
この曲は、ホラー映画『エルム街の悪夢3/惨劇の館』のために制作され、映画との結び付きによって広く知られるようになった。映画の世界観を反映したドラマティックな雰囲気と、Dokkenらしいメロディアスなヘヴィメタルが融合している。
楽曲は、印象的なギター・フレーズとDon Dokkenのボーカルを軸に展開。激しい演奏の中にも歌いやすいメロディーがあり、映画のテーマ曲としての印象的な存在感を備えている。
また、ミュージック・ビデオでは映画の映像やキャラクターとの関連が取り入れられ、80年代のヘヴィメタルとホラー映画文化が交差する作品となった。
「Dream Warriors」は、アルバムの締めくくりにふさわしいドラマ性を持つだけでなく、Dokkenの音楽を映画ファンにも広く届けた楽曲として、バンドの歴史において重要な位置を占めている。
メンバー間の緊張と、演奏に刻まれた火花
『Back for the Attack』は、Dokkenの黄金期を象徴するアルバムである一方、メンバー間の関係が難しくなっていた時期の作品としても知られている。
中心人物であるDon DokkenとGeorge Lynchは、ボーカルとギターという異なる立場からバンドの個性を形作っていた。しかし、強い個性を持つ両者の間には緊張が生まれ、バンドの活動にも影響を及ぼしていく。
それでも、本作で聴ける演奏の完成度は非常に高い。George Lynchのギターはさらに攻撃的で表現力豊かになり、Don Dokkenのボーカルは楽曲のメロディーを力強く支えている。Jeff PilsonとMick Brownによるリズム隊も、複雑なギター・フレーズを支えながら、楽曲に推進力を与えている。
メンバー間の関係が順調だったからこそ生まれた作品というよりも、それぞれの強烈な個性と演奏能力がぶつかり合うことで完成した作品として聴くこともできる。
本作は、Dokkenの音楽的な充実を示すと同時に、80年代のアメリカン・メタルが持っていた華やかさ、攻撃性、そして緊張感を伝えるアルバムでもある。
収録曲
- Kiss of Death
- Prisoner
- Night by Night
- Standing in the Shadows
- Heaven Sent
- Mr. Scary
- So Many Tears
- Burning Like a Flame
- Lost Behind the Wall
- Stop Fighting Love
- Cry of the Gypsy
- Sleepless Night
- Dream Warriors
全13曲を収録。George Lynchのギターを存分に味わえるインストゥルメンタル「Mr. Scary」から、メロディアスな「Burning Like a Flame」、映画との結び付きでも知られる「Dream Warriors」まで、アルバム全体に多彩な聴きどころがある。
価格:330円(税込、送料別) (2026/11/2時点) |
参加ミュージシャン
- Don Dokken(ドン・ドッケン) — リード・ボーカル
- George Lynch(ジョージ・リンチ) — リード・ギター、リズム・ギター
- Jeff Pilson(ジェフ・ピルソン) — ベース、バック・ボーカル
- Mick Brown(ミック・ブラウン) — ドラム、バック・ボーカル
制作スタッフ
- Neil Kernon(ニール・カーノン) — プロデューサー、レコーディング
- Michael Barbiero(マイケル・バービエロ) — ミキシング
- Steve Thompson(スティーヴ・トンプソン) — ミキシング
- Bob Ludwig(ボブ・ラドウィック) — マスタリング(オリジナルLPのクレジット)
作品情報
- アーティスト: Dokken(ドッケン)
- アルバム: 『Back for the Attack』
- 邦題: 『バック・フォー・ジ・アタック』
- 発表年: 1987年
- リリース日: 1987年11月2日とする資料あり
- レーベル: Elektra Records
- プロデューサー: Neil Kernon
- 録音スタジオ: Can-Am Studios、Music Grinder Studios、One on One Studios、Rumbo Recorders、Total Access Recording Studios
- 収録曲数: 13曲
- ジャンル: ヘヴィメタル、ハードロック、グラム・メタル
代表曲 Mr. Scary
『Back for the Attack』を語るうえで、ギター・ファンにぜひ聴いてほしいインストゥルメンタル。
George Lynchのギターが主役となるこの曲では、速弾きだけに頼らない表現力が際立っている。鋭いリフ、独特の音色、緊張感を高めるフレーズが組み合わさり、ボーカルがなくても強い物語性を感じさせる。
Dokkenの魅力は、Don Dokkenのメロディアスな歌声とGeorge Lynchのギターが生み出す対比にある。しかし「Mr. Scary」では、そのギターが単独で楽曲を牽引し、George Lynchの音楽的な個性をより明確に示している。
技巧的でありながら、曲としての構成と印象的なフレーズを備えている点も重要だ。ギター・ソロの連続ではなく、リフや音色、展開を通じて楽曲全体の緊張感を作り上げている。
80年代ヘヴィメタルのギター表現を知るうえで、ぜひ押さえておきたい一曲である。



コメント