1977年11月4日リリース(米国)
パンクの衝動とポップセンスが結実した3rdアルバム
『Rocket to Russia』は、ニューヨーク・パンクを代表するバンド、Ramonesが1977年に発表した3rdアルバムである。前作『Leave Home』と同じ年にリリースされた本作は、デビュー作『Ramones』から続くシンプルでスピード感あふれるパンク・ロックをさらに発展させ、彼らの持つポップなメロディセンスを存分に引き出した作品となった。
1977年は、イギリスでSex PistolsやThe Clashなどが注目を集め、パンク・ロックが大きなムーブメントへと発展していった時期でもある。ニューヨークのCBGBを拠点に活動していたRamonesも、その中心的な存在としてシーンを牽引していた。
本作には、すでにシングルとして発表されていた「Sheena Is a Punk Rocker」をはじめ、「Rockaway Beach」「Teenage Lobotomy」「Cretin Hop」など、現在もライブの定番として親しまれる楽曲が収録されている。
アルバムのタイトルは、ロシアへ向かうロケットを意味するユーモラスなもの。社会風刺やナンセンスなユーモアを交えた歌詞と、疾走感のある演奏が全編を貫いている。
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より洗練されたサウンドと幅広い音楽性
Ramonesの音楽的な特徴は、Johnny Ramoneによるダウンストローク主体のギター、Dee Dee Ramoneの力強いベース、Tommy Ramoneのシンプルで推進力のあるドラム、そしてJoey Ramoneの独特なボーカルにある。
本作でも、短く鋭い楽曲を次々と繰り出す基本姿勢は変わらない。しかし、前2作と比較するとサウンドの厚みや録音の完成度が向上しており、ギターの重ね録りなどによって、シンプルな編成ながらも豊かな音像を作り上げている。
また、Ramonesの魅力であるパンクの攻撃性だけでなく、1960年代のサーフ・ロックやポップス、ガレージ・ロックからの影響も色濃く表れている。
「Rockaway Beach」にはThe Beach Boysを思わせるサーフ・ロックの感覚があり、「Sheena Is a Punk Rocker」では軽快なメロディとパンクのスピード感が融合している。
一方、「Here Today, Gone Tomorrow」では比較的ゆったりとしたメロディを聴かせ、バンドの音楽的な幅を示している。
こうした曲調の変化があることで、アルバム全体に単調さを感じさせず、短い楽曲を連続して聴かせるRamonesならではの構成が成立している。
Ramonesならではのパンク・ロック『Rockaway Beach』
アルバムを代表する楽曲のひとつが、Dee Dee Ramoneによって書かれた「Rockaway Beach」だ。
ニューヨーク市クイーンズ区にあるロッカウェイ・ビーチを題材にしたこの曲は、都会に暮らす若者が海辺へ出かける開放感を、軽快なリズムとキャッチーなメロディで表現している。
The Beach Boysなどのサーフ・ミュージックを思わせる雰囲気を持ちながら、Johnnyの鋭いギターとRamones特有の疾走感が加わることで、彼らならではのパンク・ロックに仕上がっている。
同曲はシングルとしても発表され、米国Billboard Hot 100で最高66位を記録。Ramonesにとって、一般の音楽リスナーにも存在を広く知らしめるきっかけとなった楽曲のひとつである。
Ramonesの代表曲『Sheena Is a Punk Rocker』
Joey Ramoneが作曲した「Sheena Is a Punk Rocker」は、Ramonesの代表曲として長く愛されているナンバーだ。
1960年代のサーフ・ロックやポップスの影響を感じさせる明るいメロディに、パンク特有のスピード感と勢いを組み合わせている。
タイトルに「Punk Rocker」という言葉を掲げたことも印象的で、当時の若者文化とパンク・ロックの結びつきを象徴する楽曲として知られている。
この曲はアルバムに先駆けて1977年5月にシングルとして発表され、米国Billboard Hot 100で最高81位、英国シングルチャートで最高22位を記録した。
なお、前作『Leave Home』の一部のプレス盤にも収録されていた経緯があり、Ramonesの初期を代表する重要な楽曲のひとつとなっている。
多様な曲の変化『Teenage Lobotomy』
アルバム後半の冒頭を飾る「Teenage Lobotomy」は、Ramonesらしいユーモアと独特の世界観が凝縮された楽曲だ。
ロボトミー手術を題材にした風刺的な歌詞と、Joeyの印象的なボーカルが組み合わさり、短い楽曲ながら強いインパクトを残す。
シンプルなコード進行を基盤としながら、曲の展開には変化があり、単純なスピード一辺倒ではないRamonesのアレンジ面での工夫も感じられる。
ライブでも重要なレパートリーとなり、彼らの持つユーモラスで少し危ういパンクの魅力を象徴する一曲である。
カバー曲にも表れたルーツへの敬意
本作には、オリジナル曲だけでなく、Bobby Freemanの「Do You Wanna Dance?」と、The Trashmenの「Surfin’ Bird」という2曲のカバーが収録されている。
「Do You Wanna Dance?」は1958年に発表されたロックンロール・ナンバーで、Ramonesは原曲の親しみやすいメロディを残しながら、独自のスピード感とギターサウンドを加えている。
一方の「Surfin’ Bird」は、1963年にThe Trashmenがヒットさせた楽曲。独特のボーカルと勢いのある演奏が特徴で、Ramonesのガレージ・ロックやサーフ・ミュージックへの親近感がよく表れている。
こうした選曲からも、Ramonesが単に新しい音楽としてパンクを生み出したのではなく、それ以前のロックンロールやポップスの伝統を受け継ぎながら、自分たちのスタイルへと作り替えていたことが分かる。
参加メンバー・制作クレジット
本作の演奏を担当したのは、Joey、Johnny、Dee Dee、Tommyによるオリジナル・ラインナップである。
- Joey Ramone:ボーカル
- Johnny Ramone:ギター
- Dee Dee Ramone:ベース
- Tommy Ramone:ドラム
プロデュースはTony BongioviとTommy Ramone(T. Erdelyi名義)が担当。エンジニアはEd Stasium、アシスタント・エンジニアはDon Bermanである。
主な録音はニューヨークのMediasound Studiosで行われ、ミックスはPower Station Studiosで実施された。マスタリングはSterling SoundのGreg Calbiが担当している。
なお、「Sheena Is a Punk Rocker」と「I Don’t Care」は、アルバムの主要な録音セッションより前の1977年4月に録音された音源を使用している。
制作面では、前作までの荒々しさを残しながらも、ギターの音を重ねるなどしてサウンドに厚みを持たせたことが特徴だ。エンジニアのEd Stasiumの仕事も、本作の音作りを語るうえで重要な要素となっている。
収録曲
Side A
- Cretin Hop
- Rockaway Beach
- Here Today, Gone Tomorrow
- Locket Love
- I Don’t Care
- Sheena Is a Punk Rocker
- We’re a Happy Family
Side B
- Teenage Lobotomy
- Do You Wanna Dance?(Bobby Freemanのカバー)
- I Wanna Be Well
- I Can’t Give You Anything
- Ramona
- Surfin’ Bird(The Trashmenのカバー)
- Why Is It Always This Way?
パンク・ロックの魅力をポップに昇華した重要作
『Rocket to Russia』は、Ramonesが持つパンク・ロックの攻撃性と、ロックンロールやサーフ・ミュージックに通じる親しみやすいメロディを高い水準で融合させたアルバムである。
デビュー作がパンク・ロックの基本形を提示した作品だとすれば、本作はそのスタイルをより洗練させ、楽曲の幅やサウンド面での充実を実現した作品といえる。
また、本作はオリジナル・ドラマーであるTommy Ramoneが参加した最後のスタジオ・アルバムでもある。翌1978年にはTommyがドラマーの座を離れ、バンドは新たな体制へと移行していく。
「Rockaway Beach」「Sheena Is a Punk Rocker」「Teenage Lobotomy」など、現在も多くのロックファンに親しまれる楽曲を収録した本作は、1970年代のニューヨーク・パンクを知るうえで欠かせない一枚であり、Ramonesの音楽的な魅力が凝縮された作品である。
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