Stevie Ray Vaughan『The Sky Is Crying』

アルバム

1991年11月5日リリース(米国)

死後に届けられた、ブルースへの深い敬意

『The Sky Is Crying』は、スティーヴィー・レイ・ヴォーン&ダブル・トラブルが1991年に発表したアルバムである。1990年8月、ヘリコプター事故によって35歳で亡くなったスティーヴィーの死後にリリースされた作品で、1984年から1989年までの録音セッションから選ばれた10曲が収録されている。

本作は、既発アルバムに収録されなかった音源を中心に構成されているが、単なる未発表曲集ではない。ブルースの伝統を受け継ぎながら、ロックのダイナミズムと卓越したギター表現を融合させてきたスティーヴィーの音楽性を、改めて浮き彫りにする内容となっている。

アルバムの選曲と編集を担当したのは、兄でありギタリストでもあるジミー・ヴォーン。録音時期の異なる音源を一枚の作品としてまとめ上げ、スティーヴィーが残した演奏の数々を、彼の死後にファンへ届けた。

収録曲に刻まれたブルースとロック

収録曲は、エルモア・ジェームスやハウリン・ウルフ、ウィリー・ディクスンといったブルースの巨人たちの楽曲から、ジミ・ヘンドリックスやロニー・マックの作品、そしてスティーヴィー自身のオリジナル曲まで幅広い。

その中心にあるのは、ブルースをルーツとしたスティーヴィー独自のギター・スタイルだ。太く力強いトーン、鋭いピッキング、繊細なチョーキング、そして一音一音に感情を込める表現力。激しい演奏の中にも、ブルース特有の哀愁や歌心が息づいている。

また、アルバムにはインストゥルメンタルも収録されている。歌を伴わない演奏でも、ギターがメロディを語り、バンド全体が一体となって楽曲を展開していく。スティーヴィーが単なる技巧派ギタリストではなく、ブルースの伝統を自分自身の言葉で表現するミュージシャンだったことが伝わってくる。

力強さと繊細さを自在に行き来する『The Sky Is Crying』

アルバムのタイトルにもなっている「The Sky Is Crying」は、ブルース・ギタリストのエルモア・ジェームスが1959年に発表した楽曲である。

スティーヴィーのバージョンでは、原曲の持つ哀愁を大切にしながら、エレクトリック・ギターの豊かな音色とダイナミックな表現によって、独自の解釈を加えている。

冒頭から印象的なギターのフレーズが響き、歌の合間にもギターが感情を語る。派手な速弾きに頼るのではなく、音の伸びや間の取り方、フレーズの抑揚によってブルースの情感を描き出している点が聴きどころだ。

スティーヴィーのギターは、力強さと繊細さを自在に行き来する。原曲への敬意を保ちながら、自分自身の表現として完成させたこの演奏は、彼がブルースの伝統をどれほど深く理解していたかを示している。

録音メンバーと制作

本作の中心となる演奏メンバーは、スティーヴィー・レイ・ヴォーン(ギター、ヴォーカル)、トミー・シャノン(ベース)、クリス・レイトン(ドラムス)、リース・ワイナンズ(キーボード)。

いずれもダブル・トラブルの主要メンバーであり、スティーヴィーのギターを支える強固なリズムと、ブルースを基盤としたバンド・サウンドを作り上げてきた仲間たちである。

ただし、本作は複数年にわたる録音から選ばれた作品であり、全曲が同じセッションで録音されたわけではない。主な録音場所は、ニューヨークのパワー・ステーション、ダラスのダラス・サウンド・ラボ、メンフィスのキヴァ・スタジオ、ロサンゼルスのサウンド・キャッスル・スタジオなど。

録音時期や曲によってプロデュース体制も異なり、ジム・ゲインズ、リチャード・マレン、スティーヴィーとダブル・トラブルのメンバーらが制作に携わっている。最終的な選曲と追加プロデュースを担当したジミー・ヴォーンの仕事によって、異なる時期の演奏が一枚のアルバムとしてまとめられた。

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オリジナル収録曲

  1. Boot Hill
  2. The Sky Is Crying
  3. Empty Arms
  4. Little Wing
  5. Wham!
  6. May I Have a Talk with You
  7. Close to You
  8. Chitlins con Carne
  9. So Excited
  10. Life by the Drop

スティーヴィー・レイ・ヴォーンが残したもの

『The Sky Is Crying』は、スティーヴィー・レイ・ヴォーンのキャリアを振り返るうえで重要な作品である。1984年から1989年という、彼がブルース・ロックの第一線で活動していた時期の演奏が収められており、そのギタリストとしての幅広さと、ブルースに対する揺るぎない姿勢を改めて感じさせる。

ジミ・ヘンドリックスの「Little Wing」のような繊細な表現から、エルモア・ジェームスの「The Sky Is Crying」に見られる伝統的なブルースの解釈まで、収録曲にはスティーヴィーの音楽的なルーツと個性が凝縮されている。

彼の死後に発表された作品でありながら、そこに刻まれているのは喪失感だけではない。ブルースを愛し、その可能性をロックのフィールドへと広げたギタリストの確かな足跡である。

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