1982年11月1日リリース(米国)
アメリカン・ハード・ロックの新たな才能を告げたデビュー作
『Dawn Patrol』は、アメリカのハード・ロック・バンド、ナイト・レンジャーが1982年に発表したデビュー・アルバムである。
ツイン・リード・ギターによる迫力ある演奏と、耳に残るキャッチーなメロディ、そしてメンバーそれぞれの個性を生かしたヴォーカル・ワーク。本作には、後のナイト・レンジャーを特徴づける音楽性がすでに表れている。
当時のアメリカでは、ハード・ロックにメロディアスな歌唱や洗練されたアレンジを取り入れたバンドが注目を集め始めていた。ナイト・レンジャーもその流れの中から登場したバンドだが、単にポップな方向へ傾くのではなく、ギターを中心とした力強いロック・サウンドをしっかりと打ち出している。
本作のリリース後、バンドは次作『Midnight Madness』で大きな成功を収めることになる。その飛躍につながる原点として、『Dawn Patrol』は重要な意味を持つ作品である。
ツイン・ギターとメロディの融合
本作の大きな魅力は、ブラッド・ギルスとジェフ・ワトソンによるツイン・ギター体制にある。
ブラッド・ギルスは、独特のアーミングや大胆な表現を取り入れた個性的なプレイで知られ、ジェフ・ワトソンは正確でスピーディーなギター・ワークを持ち味とする。異なる個性を持つ2人のギタリストが、リード・フレーズやハーモニーを組み合わせることで、バンドならではのサウンドを作り上げている。
また、ジャック・ブレイズとケリー・ケイギーという2人のヴォーカリストの存在も重要だ。ベースを担当するジャックは力強く伸びやかな歌声を持ち、ドラムスのケリーはより繊細で表情豊かなヴォーカルを聴かせる。曲ごとに異なる歌声が使われることで、アルバム全体に変化が生まれている。
キーボードのアラン・フィッツジェラルドも、楽曲に厚みと彩りを加えている。ギターの存在感を損なうことなく、メロディアスなサウンドを支えるアレンジが、本作の聴きやすさにつながっている。
ナイト・レンジャーの魅力を凝縮した『Don’t Tell Me You Love Me』
アルバムの冒頭を飾る「Don’t Tell Me You Love Me」は、ナイト・レンジャーの魅力を凝縮した代表曲である。
ジャック・ブレイズがリード・ヴォーカルを担当し、歯切れのよいリズムと勢いのあるギター・リフを軸に、躍動感あふれるハード・ロックを展開する。
特に印象的なのが、ブラッド・ギルスとジェフ・ワトソンによるギター・プレイだ。2人の個性が際立つソロと掛け合いは、ツイン・ギター編成ならではの醍醐味を存分に味わわせてくれる。メロディアスでありながら、演奏には十分な攻撃性とスピード感がある。
この曲はアルバムからの最初のシングルとしても発表され、ミュージック・ビデオがMTVで紹介されたことも、バンドの知名度を高めるきっかけとなった。ナイト・レンジャーの名を広めた初期の重要曲であり、本作を象徴する一曲といえる。
録音メンバーと制作
本作のレコーディングに参加したメンバーは、以下の5人。
- ジャック・ブレイズ:ベース、ヴォーカル
- ブラッド・ギルス:ギター、ヴォーカル
- ジェフ・ワトソン:ギター
- アラン・フィッツジェラルド:キーボード、ヴォーカル
- ケリー・ケイギー:ドラムス、ヴォーカル
プロデューサーはパット・グラッサー。録音はロサンゼルスのアレン・ゼンツ・レコーディング「The Big Room」で行われ、エンジニアはジョン・ヴァン・ネストが担当した。
当時のナイト・レンジャーは、ツイン・ギターと複数のヴォーカリストを擁する編成を生かし、演奏力とメロディの両面を追求していた。本作では、そのバンドの持ち味を明快なサウンドにまとめ上げている。
なお、オリジナル盤はボードウォーク・レコードから発売された。後年の再発盤ではゲフィンなど別のレーベル名が記載されているものもある。
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オリジナル収録曲
Side A
- Don’t Tell Me You Love Me
- Sing Me Away
- At Night She Sleeps
- Call My Name
- Eddie’s Comin’ Out Tonight
Side B
- Can’t Find Me a Thrill
- Young Girl in Love
- Play Rough
- Penny
- Night Ranger
ナイト・レンジャーの出発点
『Dawn Patrol』は、ナイト・レンジャーが持つメロディアスなハード・ロックの魅力を、デビュー作の段階ですでに確立していたアルバムである。
ブラッド・ギルスとジェフ・ワトソンによるツイン・ギター、ジャック・ブレイズとケリー・ケイギーの個性豊かなヴォーカル、そしてアラン・フィッツジェラルドのキーボード。それぞれの持ち味が組み合わさることで、バンド独自のサウンドが形作られている。
翌1983年に発表される『Midnight Madness』は、「Sister Christian」などのヒットによってバンドを全米規模の人気グループへと押し上げた。しかし、その成功の土台はすでに本作にあった。
80年代アメリカン・ハード・ロックの魅力を知るうえで、そしてナイト・レンジャーの出発点を振り返るうえで、欠かすことのできないデビュー・アルバムである。



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